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歯科金属アレルギーチェック

最近テレビや雑誌などで、歯科金属アレルギーが扱われることが多くなりました。ことに、スマップの中居正広さんと笑福亭鶴瓶師匠の「世界仰天ニュース」で取り上げられてから反響が大きく、当院でも皮膚科に通院しても改善されずひょっとしたら歯科金属アレルギーではないかと、ご自分で疑われて来院されてる方が多くなりました。

よろしければ、you tubeで「世界仰天ニュース 金属アレルギー」で検索して見て下さい。こんなこともあるのかと思われると思います。

ここで少しアレルギーについてお話しします。

アレルギーとは何?

体には体外からの異物(抗原と言い、アレルギーを引き起こす物質です)に、対抗する物質(抗体と言います)を作って体を守ろうとする働きがあります。これは体にとっていいものかどうかを判断して取り除いてくれます。この機能がうまく働かないと、本来有害でないものに対して過剰に反応することがあります。例えば、花粉症は本来有害ではない花粉に対して過剰に反応を起こして鼻水や涙などの症状が現れます。とても苦しんでいる方が多いですよね。(院長の竹中もまぎれもなく重度の花粉症です。この言葉を書いているだけでかゆくなってきます)これを「アレルギー」といいます。

歯科金属アレルギーはどうやって起こるの?

歯科医院で使われる詰め物、かぶせ物の多くは合金と言って数種類の金属を混ぜ合わせたものからできています。

お口の中は、歯磨きでとれなかった汚れから出る酸や唾液に常に接触しています。また、飲食物に含まれる酸・冷たいものと熱いものを交互に摂取したときの口内の温度変化・金属の歯同士の接触や摩擦など、これらによりざらついた面から腐食することがあります。しかも、お口の中は高温多湿な環境で、金属にとっては非常に過酷です。このような環境の中では金属は金属イオンとして小さくなって溶け出します。

金属イオンは、そのほとんどが吸収されずに便や尿、汗などで排出されます。しかし、ごくわずかな金属イオンが少しずつ蓄積されて体のタンパク質とくっついて「抗原」になることがあります。この抗原を体が異物と判断して、アレルギー症状が出ることがあります。

歯科金属患者さんのお口の中を見ますと、虫歯の治療によって金属が埋め込まれていることがほとんどです。その金属が歯科金属アレルギーの原因と考えられています。歯科治療をした後でアレルギー性の皮膚炎などの症状が出た場合には、金属アレルギーを疑うべきだと言われています。

最近は歯科治療をする前に、金属アレルギーの有無を調べるためにパッチテストを行うことが多いです。しかし、残念ながら、パッチテストのアレルギー反応の判定率は100%ではありません。パッチテストで陰性だったとしても、金属アレルギーになってしまうことがあるのです。

なぜなら、パッチテストを行うのは乾燥した皮膚の上ですが、実際のアレルギーが起きているのは、金属が溶け出しやすい高温多湿な口の中。環境が全く違うからです。もしパッチテストで陽性なら、その金属にはほぼ間違いなくアレルギー反応があると思っていただいていいと思います。

金属アレルギーの症状は?

皮膚のかぶれ1・接触性皮膚炎
よく知られているのは、ネックレス、ピアスは時計などの装飾品による『皮膚のかぶれ』です。汗の中の塩分は金属をイオン化しやすいため、装飾品をつけていた場所が赤く腫れたりかぶれたりします。


皮膚のかぶれ2・全身型金属アレルギー
イオン化した金属が皮膚や粘膜から取り込まれることで、口から離れた体の部位に症状が出てきます。原因がお口の中の金属であっても、口の中に症状が出るとは限らず手のひら、足の裏やお腹などに発症することあります。そのため症状のあるところに薬を塗ってもなかなか治らないということが最近よくあるようです。

全身型金属アレルギーの初期によくみられる症状が、手のひら、足の裏に慢性的に生じる治りにくい湿疹です。よく『手荒れ』や『主婦性湿疹』と言われます。はじめのうちはステロイド剤の外用薬で一時的に治ってしまうらしいですが、何年にもわたって症状が出たり治ったりの繰り返しで、だんだんステロイド剤も効かなくなってきます。そのため、処方されるステロイド剤がどんどん強いものになり、発疹の範囲も広がってきます。ここまで症状が進行すると、さすがに患者さんも変だなと思い始めるようです。

皮膚のかゆみと発疹が、歯科医院の金属アレルギー治療で改善された方

ワンポイントアドバイス

アレルギー洗剤かぶれなど、外からの刺激による手の湿疹の時は、利き手のよく使う指(親指や人差し指)の先から始まるのが普通です。故に手のひらや指の縁に湿疹ができた場合や、足や腹などに湿疹ができた場合(どう考えても洗剤が触れにくいところに湿疹ができた時)は、歯科金属アレルギーを強く疑う必要があります。

また、皮膚科で水虫だと診断されて、処方された水虫の薬を塗ったのに、全く改善がみられない場合も金属アレルギーを疑ってみる必要があります。(ご自分で水虫だと思い込んで、薬局で水虫の薬を塗ったのに改善がみられない、といった場合は別です。まずは医師の診断を受けてくださいね。)

金属アレルギーになりやすい特徴はあるの?

「私はアレルギー体質だから」という方も多くみえますが、その原因や顕著な特徴はいまだ分かっていません。ただいえることは金属アレルギーの方は明らかに増えてきています。これは、大気や水道水、食べ物に含まれる化学物質の影響で、現代人の免疫システムが狂ってきていることが理由の一つであると言えると思います。きれい好きの日本人は、洗剤の進化により皮膚の大事なバリアまできれいにはぎとられて皮膚の細胞がむき出しに近い状態になっています。

また、外食、ファーストフード、インスタント食品など、いつでも手軽に済ませることができるようになりましたが、保存料などの薬品の添加は明らかで、薬だらけの食べ物はアレルギー発症の大きな原因と言われています。

口腔内の衛生状態も大切です。お口の中に歯垢や歯石が多くなると、バイキンが出す酸で、金属が溶け出しやすい環境を作ってしまうので、金属アレルギーになりやすくなってしまいます。定期的に歯科医院で歯石をとってもらい、クリーニングをした方がいいです。

金属アレルギーの方にはできれば控えていただきたいもの

①多量の金属が含まれている飲食物や嗜好品

  • チョコレート
  • コーヒー
  • お茶(紅茶、抹茶、ウーロン茶など)
  • 豆類
  • タバコ

②金属が溶け出しやすい容器に入っている飲食物

  • 缶コーヒー
  • 缶ビール
  • 缶詰
  • 缶ジュースなど

③鍋の金属が溶け出しやすい調理

  • お酢を使った料理

④かゆみを増強する刺激物

  • アルコール
  • 香辛料などの刺激物

※すべて飲食してはダメというわけではなく、控えめにした方がいいという意味です。

水銀を含む保険金属「アマルガム」

20年くらい前まで、小さなむし歯を削った後の詰め物に、「アマルガム」という保険の金属がよく使われていました。このアマルガムという金属は、水銀を50%も含んでいます。
(水銀の他には、銀35%、スズ9%、銅6%、少量の亜鉛を含んでいます。)

「保険で認められている金属なのだから、水銀が含まれていても大丈夫なのでは?」と思われるかもしれませんが、金属は長い年月をかけて劣化していきます。ましてや、口の中は常に高温多湿な、金属にとって過酷な環境です。熱い飲み物などでも(ほんの少しずつですが)溶けてしまうことがありますし、長年のうちにアマルガムも腐食し、溶け出た成分が体に吸収、蓄積していくといわれています。

明るい部屋で、鏡を使って口の中を見てみてください。
昔むし歯治療をしたところに、黒ずんだ小さな詰め物があったら、それはアマルガムかもしれません。

水銀は、不定愁訴を引き起こすとも言われています。水銀が胎児や母乳に影響を与える可能性があることから、イギリスの厚生省やスウェーデンでは、妊婦にアマルガムの詰め物をしないように警告しています。

アマルガムは固まりやすくて溶けやすい金属のため、以前は歯科治療でもよく使われていましたが、最近ではアマルガムが含む水銀の危険性を考慮して、だんだんと使われなくなってきています。 アマルガムは形が変わりやすいので、詰めてから年月が経ったアマルガムは、その境目からむし歯が再発することがよくあります。

当院では、むし歯を削った後の詰め物に、リスクの高いアマルガムを使わないことはもちろんですが、劣化して腐食しているアマルガムの除去も積極的に行なっています。
気になる方は、一度ご相談ください。

最後に

医師、歯科医師でも金属アレルギーを正しく見分けるのはとても難しいと思います。臨床経験が40年ぐらいになるベテランの歯科医師の先生ですら、「金属アレルギーなんてあるわけがない」と言っておられる方もおみえになります。

しかし、近年の日本人は先ほどにも書きましたが、免疫機構の低下により、アレルギーの患者さんは増える傾向にあります。私はベテラン先生のお考えを聞いて、「金属アレルギーの患者さんが目の前にいても、我々歯科医師や医師が見逃してきてしまったのではないか」と思いました。

やみくもに金属を外していけば良くなるというわけでもないので、医療者側に正しい知識がないと、患者さんに適切な治療ができない可能性もあります。しかも、大学で金属アレルギーについてしっかりと教えられるわけではないので、卒業後、東洋医学・西洋医学の色々な先生に教えを請わなければ、なかなか治療できない分野でもあります。

歯科医師なら誰でも金属アレルギーのことを知っている、ということは決してないので、歯科医師の先生によくお話を聞いた方がよいと思います。

少し昔語りをさせていただきますと、私が歯科医師になって3年が過ぎたあたりから、銀歯の下で虫歯になり、再治療が多いことに気づき始めました。銀歯と歯の間の段差から虫歯が進み、場合によっては神経を取らざるを得ない状態になってしまい、悲しい気持ちにもなりました。銀歯がとれて来院される方の多くは、取れてしまった歯の中が大きな虫歯になっていました。

銀歯はレントゲンを撮ると反射してしまうので、初期の段階で銀歯の下が虫歯になっているかどうかが非常に診断しづらいのです。銀歯の中の状態は全く分からないので、銀歯が外れるほど歯が大きく虫歯になって初めて分かる、というのが実情で、診断することの難しさを痛感してきました。これがもし銀歯でなければ、レントゲンで初期の虫歯を発見できる可能性が高まります。そういった理由から、当時から、できることなら銀歯は入れないほうがよいのではと思っていました。ただその位の軽い気持ちでした。

決定的に、「銀歯をできることなら入れない方がよい」と思ったのは、私の父親のアレルギーがきっかけでした。父が、手のひらのただれとかゆみで苦しんでいて、数件の皮膚科にて診察していただいたのですが、どの病院でも同じ診断名、同じお薬を処方され、治ることがありませんでした。

ある日父から歯科医師である私に、「金属アレルギーかもしれないから、銀歯を外してくれないか」と言われ、金属を外して経過をみました。その時は半信半疑でしたが、ひと月も経たないうちに、手のかゆみは軽快し、塗り薬も要らないほど良くなりました。金属アレルギーということが本当にあるんだという貴重な体験になりました。まさか治るとは思っていなかったので、写真も撮ってありませんでした。

当院は保険医療機関です。金属アレルギー専門の歯科医院ではありません。一般の歯科治療がメインです。患者さんのご事情により、保険の銀歯を入れることも多々あります。先日、夜も眠れないほどの金属アレルギーのかゆみが全快した患者さんから言われました。

患者さん: 「先生の医院は、銀歯なんかあまり入れないんですよね。」
私(院長): 「いえいえ、患者さんのご事情もあって、銀歯を入れることも多いですよ。」
患者さん: 「え!そうなんですか?先生は銀歯はほとんど入れないんだと思ってました。私は金属を外してから夜眠れるようになって、本当に良かったです。先生のおかげです。ありがとうございました。」
私(院長): 「そう思っていただけるとありがたいんですが、なかなかご事情も許されない方も多いんですよ。」
患者さん: 「事情ってお金の事情ですよね。確かにみんな生活が苦しいかもしれないですけど、金属を外したら生活も体調もこんなに良くなるって分かってたら、払っても惜しくないっていう人はけっこういるんじゃないでしょうか…。私みたいに悩んで苦しんでる人もいるだろうし、先生、もっと歯の大切さを伝えてあげて下さい。」

と言われました。
おっしゃられるとおりだと思います。これからも、知識を得て技術を磨きながら、患者さんに色々な情報を提供していきます。


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